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執筆者の写真謙一 宮本

認知症の予防について

みなさま、はじめまして。私は、神奈川県川崎市多摩区にあるクリニックの院長で、主に訪問診療(皆さまが生活している自宅や施設にお伺いして診療を行うこと)を行っている医師の宮本謙一と申します。

これから、不定期にはなりますが、訪問診療、在宅医療、高齢者医療、認知症、緩和ケアなどに関するブログを書いていこうと思っています。


初回は、認知症の予防について書きたいと思います。

日本は世界でもトップクラスの長寿国です。長生きすればするほど、いろいろな病気になる可能性も高くなります。

例えば、癌がそうです。現在では、日本人の2分の1が人生の途中で癌と診断され、3分の1が癌で命を落とすとされています。それを聞くと、癌がどんどん増えている、癌の発症率がどんどん上昇していると感じてしまいます。しかし、実際には違います。癌も老化現象の一つであり、他の病気で命を落とさず、長生きすればするほど、いずれは癌にかかる可能性が高くなります。(もちろん、診断技術の向上の影響もあります。)


認知症も同様です。認知症とは、簡単に言うと、「脳全体の機能が低下することにより様々な症状(生活上の支障)が出ること」であり、脳の老化現象ですので、長生きすればするほど避けられないものです。

現在の医学では、進行を遅らせることはできますが、進行を止めたり、治すことはできません。そう考えると、大事なことは、認知症になっても困らずに楽しく過ごすことができる社会を作ることが最も大事だと思います。それに加えて、今回のテーマである「認知症を予防する」という考え方も重要だと思います。


認知症を予防すると言っても、何か特別な方法があるわけではありません。皆さまがイメージする、何となく健康的な生活、何となく長生きできそうな生活を送ることが重要です。すなわち、生活習慣病の悪化を防ぎ、明るく楽しく前向きに生活することが大事です。


もう少しだけ具体的に書きます(もっと詳しく勉強したい方は専門書をご覧ください)。

認知症予防に関する分かりやすい指針として、私が説明に使うのが、認知症予防財団が提唱する「認知症予防の10か条」です。以下で紹介します。赤字は私の補足です。


1.塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を

⇒塩分は6g以下が目標となります。野菜も意識して食べましょう。

2.適度に運動を行い足腰を丈夫に

⇒やはり歩くことが一番大事です。日本人のデータでは、毎日5000歩以上歩くことで認知症を予防できることが示されています。車生活でほとんど歩かない方は、散歩などを意識して行うと良いでしょう。自宅内ではスクワットなどの運動が良いと思います。テーブルの前で椅子に座り、手で支えながら、座ったり立ったりすることを繰り返せば、十分なスクワット運動になります。

3.深酒とタバコはやめて規則正しい生活を

⇒飲める方は適量で、飲めない方は無理しないことが大事です。タバコを吸う方には申し訳ありませんが、禁煙は必須と考えられています。

4.生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を

⇒主治医のいる方は、その指示に従いましょう。特に働き盛りなどの若い方は、しっかりと治療した方が良いでしょう。

5.転倒に気をつけよう 頭の打撲は認知症招く

⇒転倒を繰り返すことで、脳の細胞がダメージを受けるだけではなく、頭を打ってから数週間後に慢性硬膜下血腫という頭蓋内の出血を起こすこともあります。

6.興味と好奇心をもつように

⇒趣味がある方はできるだけ続けましょう。「年だから」ではなく、いくつになってもいろんなことに興味を持つことが大事です。

7.考えをまとめて表現する習慣を

⇒日常の何気ない会話が大事だと思います。もちろん、手紙やメールの文章を考えることも効果的だと思います。

8.こまやかな気配りをしたよい付き合いを

⇒季節の挨拶、記念日のプレゼントなどは、相手のことをいろいろ深く考え、適切な文章や品物を考えるので、すごく良いことだと思います。プレゼントは、もらう方だけではなく、送る方も嬉しいものだと思います。

9.いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに

⇒服装や身だしなみはもちろん、おしゃれな会話なども大事ですね。

10.くよくよしないで明るい気分で生活を

⇒できるだけたくさん笑いましょう。なかなか笑う機会がない方も多いと思います。楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる、ということもありますので、ぜひ普段から意識して笑うように心がけてみてください。


私は5年前に「笑いヨガ」のリーダーの資格を取得し、新型コロナウイルスの流行前までは、「笑いヨガリーダー」としてたくさんの「笑いクラブ(みんなで集まって笑いヨガを楽しむ会)」を開催してきました。

日本笑いヨガ協会代表の高田佳子先生には、最初のリーダー講座から、ずっとお世話になっています。私の著書「在宅医療と笑い」(幻冬舎、2021年7月)については、たいへんお忙しい中、私のつたない原稿を読んでいただき、適切なアドバイスをいただきました。

その高田佳子先生が、先日「ボケないための笑いヨガ(改訂版)」(春陽堂書店)を出版されました。私も早速購入して拝読しましたが、大変分かりやすく読みやすい本で、一気に読み進めることができました。笑いヨガのことはもちろん、認知症予防に関して、最近の医学的な研究結果も交えて、正確かつわかりやすく記述されていて、大変参考になりました。興味がある方はぜひご一読ください。

https://www.shunyodo.co.jp/shopdetail/000000000802/

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